東京時代に多くの塾で使用されている教科書ワークを3科目分で21000円で「教材費」として「販売」しているフランチャイズ系の塾(今は消滅)があった。前に塾で一緒に教えていた同僚が本部にいて営業をしていた。私が家庭教師をしていた。
「おっかださん!すけーよ。●●●(社名)のワークをよぉ。3冊で21000円。ボロ儲けだよこれじゃ」
と電話が来た。私はびっくりした。当時から家庭教師であっても塾との差をつけないために塾専用教材を使用していた。大学の近くの学伸社(今のエヂュケーショナルネットワーク)、上野の育伸社、下高井戸の教育開発研究所(今の教育開発出版)、そして、大久保の第一教科書といろいろな教材会社を利用していた。
当時の教育開発研究所はなかなか取引が難しく、10冊を同時購入しないと販売をしてくれなかった。同業である長姉と一緒に無理矢理10冊にして買いにいったことがある。買いにいくのも交通費を節約するために自転車で買いにいった。ママチャリの籠が教材でいっぱいになり、両ハンドルも紙袋に入った教材でいっぱいだった。
生徒さんから教材費を徴収することさえも躊躇していたため毎回生徒さんの名前で領収書を発行してもらっていた。
塾通いが長い親御さんは「これくらいなのね」と異口同音にいっていた。
その当時から適正価格(定価)販売を心がけてきた。
沖縄の塾の教材費は年間1万円というところが多い。キャンペーンになると免除にする塾もある。
1万円でどんな教材を使用しているか。非常に興味がある。
1万円で抑えられる秘密がわかった。
コピーや教材を編纂したものをリソグラフ(簡易輪転機)で印刷して製本して「オリジナルテキストです」といって頒布するからである。よってコストは最小限に抑えられるからである。原稿も「ご審査用見本」という教材会社から無料で提供されるものである。業者さんによると「審査用見本」だけで終わってしまう塾も多く、その「審査用見本」をコピーして活用する塾があまりにも多いそうだ。
父兄の負担軽減、経営の円滑化を考えるといいかもしれない。
ちなみに当塾では、この「ご審査用見本」を業者さんから提供していただいているが、できる限り「赤刷り」(教師用)をお願いしている。これは、生徒用にコピー使用ができないことや見本品を生徒に販売することができないからだ。そのことを業者さんに宣言している。それにあわせてきちんと購入するため業者さんとの信頼関係も強い。そうなると業者さんから「見本ならどんどんいってください」といわれるが、業者さんも見本を提供するために負担をしていることを知っているので「もってこい!」といったことはしない。
しかし、出版部をもっている大手とは違い、素人が製本したものやコピーは破損しやすいし、生徒がすぐに捨ててしまう。実際に当塾でオリジナル教材(講師が作成したプリント)が机の中に放置されていたり、捨ててあったりということを時々みる。
これでは復習もできない。また、次回の授業で使用するといっても忘れる可能性も高い。改めて教材を取りにいったり、コピーをすることで授業時間が削られてしまう。
当塾では「MY テキスト」にこだわる。それは自分のテキストであるから愛着がわく、モチベーションも上がるからである。テキストを忘れる生徒さんはほとんどいない。著作権の問題もあるが、生徒さんのための「MY テキスト」なのである。
少々高くつくが、教材費用の明細も親御さん、生徒さんに提示して説明をしている。
今年度、さらに取引業者も増えて多くの種類の教材が入ることとなった。先日の教材展示会では3社を回り、じっくり審査した。どの展示会も午前中にいき、展示会がおわる直前までいる。そこまで教材選定に時間をかける。結果として試験対策さらにパワーアップする。
講師が料理人だったら、教材は食材である。講師力で最高の「料理」を生徒さんに提供していきたい。そして「学力向上」という「栄養」を得てほしいのだ。